アーカイブ

Archive for 2012/04/11

PMT用アンプの作成:Before-After ポイント

リンギング

上図左側が改良前(GS-1100A)、右側が改良後(自作アンプ)によるパルス波形です。

改良前では、パルス前後の値が上下に激しく振動しているのが確認できます。これを”リンギング”と呼びます。

リンギングが発生する原因はケーブルが長いと信号がプローブ-アンプ間を反射-往復するためで、これを低減するためにはケーブルを出来るだけ短くするか、ケーブル-機器間のインピーダンスマッチングつまり終端抵抗を装着する必要があります。

しかし、GS-1100Aは高電圧と信号をひとまとめにしているため終端抵抗をつけるのは困難と考えました。

そこで高電圧と信号線を別線にし、信号線を出来るだけ短くすることにしました。

ベースライン安定性

上図はプローブ内にデカップリングコンデンサの追加前後におけるパルス波形を示したものです。

左側はコンデンサなし、右側がコンデンサ有りです。

コンデンサがない場合は電圧が一定しておらず、パルス波高が正しく測定できない可能性があります。

カテゴリー:電気工作, 放射線測定

PMT用アンプの作成:実装

Probe

まずは、プローブに穴を開けてMCXコネクタを取り付けます。

下記はMCXコネクタにカップリングコンデンサおよびブリーダー抵抗取り付け後の写真です。

(写真はありませんが、このあとに写真中のピンク線と赤線間にデカップリングコンデンサを取り付けています。)

基板配置およびノイズ対策

今回はユニバーサル基板を用いることにしました。部品配置の検討はPasS(リンク)を利用しています。

また、高周波信号を扱うのでいわゆる「ベタアース・ベタVCC」対応を行いました。

参考Link:宮崎技術研究所の技術講座 よく分かる実用ノイズ対策技術

PasSで作成した実装図をスクリーンキャプチャして、Power pointを使ってベタ領域の検討を行います。

(下記画像は検討途中の画像です。ブルー:グランド、ピンク:VCC)

下記に作成途中の基板を示します。

ベタ領域は、”Sunhayato 磁気ガード T-30C(リンク)”を使用しています。一般的な銅箔テープはハンダを弾いてしまうのですが、T-30Cはハンダとの相性が良いのでお勧めです。

保護回路、I-V変換部実装

微弱な電流が漏洩しないように、トランジスタおよびI-V変換の帰還抵抗などは下記写真にあるような空中配線を行なっています。

部品や作成についてや、その他などなど

  • 電流漏洩対策:I-V変換部分は特に注意が必要で、使い捨てゴム手袋を使用して実装しました。
  • 抵抗:温度変動の影響を出来るだけ小さくするため金属皮膜抵抗を用いる必要があります。
  • コンデンサ:オペアンプ周りのコンデンサ(フィルタ部分)は、抵抗の時と同様の理由で、温度係数の小さいディップマイカコンデンサを用いています。
  • オペアンプ実装:今回用いたオペアンプはMSOP-8なので、秋月電子のDIP変換基板を介して実装しました。
  • 電源:小型のスイッチング電源型アダプター(出力5 V、エネループ充電用を流用)を用いていますが、その後”イータ電機社製 DC-DCコンバーター(OAS1R5-0505)”を用いて安定化しました。

下記に大体作り終わった状態のアンプを紹介します。その後細かい調整やアーシングを行なっています。

用意したケースが大きすぎて左側が”がら空き”ですが、いずれその他回路を実装できるので、まあ良いかな?

カテゴリー:電気工作, 放射線測定

PMT用アンプの作成:回路

回路全体

アンプ概要

PMTで得られたパルスは微小電流変化として現れます。

Audio interfaceにてAD変換するためには、この電流変化を電圧変化に変換する必要があるため、プリアンプ部でIV変換(電流-電圧変換)を行います。

また、NaI(Tl)の発光時間は230 nsecと、他のシンチレータと比較すると長いのですが、Audio interfaceでサンプリングすることを考えると非常に短い発光時間です。

そこで、積分回路(ローパスフィルター)を用いて(Audio I/Fから見ると)インパルス状の波形を遅らせることで量子化しやすくします。

当然ながら、積分することでパルス波高が低くなってしまうため、最終段でLINEレベルまで信号増幅を行います。

下項目以降に各ブロックにおける回路の解説をします。

Probe

今回用いたプローブは、もともとHVと信号線が分離していたので、難しい改造はしていません。

基本的には元に戻したわけですが、下記改良を行いました。

カップリングコンデンサ追加

アンプに高電圧が直接流入しないようにカップリングコンデンサを追加しました。

(アンプ作成中に感電したくないのが一番の理由)

ブリーダー抵抗追加

高電圧がかかっている状態でアンプとの接続を外しても大丈夫なように、ブリーダー抵抗を追加しました。

無負荷時は抵抗R: 1 megΩに電流が流れます。

デカップリングコンデンサ追加

HV入力プラブ直後にデカップリングコンデンサを追加しました。

このコンデンサを追加することで、ベース変動が安定したパルス波形を得ることができました。

なお、手持ちのコンデンサが0.01 μF (103)しかなかったため、2つを並列接続しています。

(積層セラミックコンデンサ、2 kV耐圧)

Preamp:保護回路

オペアンプに過大電圧がかかって故障するのを防ぐための回路で、抵抗とトランジスタから構成されています。

抵抗は、あまり小さいと保護に寄与できないため10 kΩを選定しました。

漏洩電流及び接合容量を出来るだけ小さくするため通常のダイオードは使用せず、小信号増幅用トランジスタのB-Eジャンクションを利用しています。

(詳細は、浜ホト資料のP108参照方)

Preamp: I-V変換

電流-電圧変換回路に用いたオペアンプはAD8616ARMZです。

ホトダイオードのアンプにも使用されている”単電源 高精度 レールtoレールオペアンプ”で、今回全てのオペアンプはこれを採用しました。

帰還抵抗値を大きくするほど増幅率が大きくなるのですが、最適な増幅率は用いるプローブによって異なります。

(BICRONはGX-1と比較するとパルスが小さかったのですが、GS-1100Aではアンプゲインの変更が出来ず、電圧を高くせざる得なかったのです。)

帰還抵抗を100 kΩ、1 megΩに分けることで補償コンデンサ容量を大きくすることができます。

(ただ、このコンデンサの有無による効果は認められませんでした。ケーブル長が短いから?)

なお、ケーブル長を短くしているため終端抵抗は設置していません。

非反転入力端子に接続されている抵抗は、入力端子間の入力オフセット電流を減少させるためです。

参考リンク

  • 楽しい勉強会 フォト・ダイオードアンプの設計回路(PDF
  • トランス・インピーダンス・アンプ設計の基礎(PDF

Shaping (filter) amp

非常に短いインパルス状の波形を遅らせるためのローパスフィルタ回路。

この回路はLMC6482のデータシート(リンクp18参照方)に掲載されている回路をそのまま使用しました。

ただし、コンデンサ・抵抗値は実際にデーター収集しながら試行錯誤的に決定してあります。

(本当はコンデンサ容量は200 pF位が良かったのかもしれませんが、330 pFしか入手出来なかったためという言い訳もあります。)

通常の放射線測定のためのShaping ampは更にポールゼロキャンセル、微分フィルタ回路などが後段に設置されます。

しかし、このシステムはソフトウェアを用いて波形分析を行うので単純なローパスフィルタを用いるだけで良いのが利点です。

出力段

前段のローパスフィルタで減衰したパルスをラインレベルまで増幅させるため、非反転増幅回路を設置します。

帰還抵抗を10 kΩとVR(0-100 kΩ)に分けることで、1倍~10倍まで増幅率を変更できるようにしました。

(抵抗R =100 Ωの値はあまり考えないで適当な値にしてあります。)

カテゴリー:電気工作, 放射線測定