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NaIシンチレーション検出器を購入しました

2011/08/16 4件のコメント

通常、NaIシンチレーション検出器を個人で購入するためには、安いとは言えない金額を出さなければなりません。
また、多くの方が心配している食品や土壌の放射線は、一般的な(空間線量を測定するための)ガイガーカウンターやシンチレーション式サーベイメーターなどでは十分な測定ができず、さらに高価な核種分析を行うための装置が必要になってしまいます。
参考: ベクレル・アイソトープモニター(LB 200, LB 2045)

しかし、eBayなどを活用して部品単位で揃えれば、比較的安価に機材を揃えることができます。

できるだけ安価に導入することができれば、より多くの人が正確な情報を得ることができるのではないかと思います。

今後、測定などのノウハウをブログにUpしていく予定でいます。
まだまだ放射線測定については勉強中ではありますが、少しでも多くの人の助けになればと考えています。

まず第一回目は、私の測定機材を紹介します。

シンチレーション検出器
1. Radiation Measurement Technologies社製: GX-1($345.95)
1φ x 1 inchの多結晶NaI+光電子増倍管を用いた検出器です。
eBayでのみ出品している会社の製品です。もちろん新品です(簡便なマニュアルも付属していました)。
ただし少数生産品らしく、常に出品されているわけではないので注意が必要です。
多結晶シンチレーターを用いているため、高エネルギー領域の検出効率は悪いのですが、安価に購入できる利点があります。
(もちろんCs-147等のエネルギースペクトルを測定できます。)
普段はiPhoneに接続して、簡易サーベイメーターとして使用しています。

2. Saint Gobain Scintillation (BICRON)社製: 中古品($145)
1.5φx 2.25 inchの(単結晶NaI?)+光電子増倍管を用いた検出器です。
これは、eBayに中古で販売されていたものです。
また、コネクターは無く、配線がむき出しだったため、自分で加工してBNCコネクターを付けて使用しています。
GX-1と比較して、高エネルギー領域の検出能および計数率が高いため、主にこちらを使用してスペクトル分析を行っています。

高電圧発生・アンプ
GS-1100A
($249)
従来、ガンマ線スペクトル測定を行うためには、高価な(高電圧発生ユニットおよび)MCA(Multi Chanel Analyzer: 波高分析器)を用いる必要がありました。
しかし、GS-1100Aを用いれば、波高分析をPCのソフトウェアで行うのでかなり安価に行えるようになります。
GS-1100Aから、シンチレーター→光電子増倍管から得られたエネルギーに応じた高さの音声パルス信号として出力されます。したがってPCのマイク入力端子などに接続して使用します。

計測・解析ソフトウェア
下記の3つのフリーソフトウェアを用いて測定を行います。
1. inTune
音声信号を表示・分析するためのツールです。
GS-1100Aから取得した信号波形を確認するために使用します。
(つい最近まで波形形状を保存してPRAに渡すためにも使っていましたが、最新PRA自身で可能になりました。)

2. PRA
inTuneと同じ作者が作成した、音声信号からスペクトル測定(波高ヒストグラム作成)を行うツールです。
従来のMCAの代わりとして使用します。

3. FitzPeaks NaI
収集したスペクトルデーターを分析するツールです。
データーベースを用いた核種判定や最小二乗法を用いた定量評価を行うことができます。
このソフトを用いて、エネルギー校正・計数効率校正を行います。
気をつけなければならないのは、同じ名称で「FitzPeaks」というのもあります(”NaI”が付いていないVersion)。こちらはエネルギー分解能が良い半導体検出器など向けです。
FitzPeaks Naiにもデーター収集を行う機能があるのですが、PRAの方が使いやすいので、FitzPeaksの収集機能は使用していません。


PC
VAIO

普通のノートPCです。
データー収集をするために用いています。
OSはWindows 7です。

デスクトップPC(ハードオフで 3,000円)
スペクトル解析をするために用いています。
内部ノイズが多く信号波形が崩れてしまうことが判明したため、データー収集には使用していません。
OSはWindows XPです。FitzPeaks NaIは古いツールなので、できるだけWindows XP(Windows 2000は試していません)上で動作させるのが良いかもしれません(Windows 7ですとHelpが開けなかったりします)。

その他細かいもの
BNCケーブル:                    1mと3mをインターネット通信販売で購入しました。1,000円位です。
容器:                                    測定する資料を詰める容器で、100均で購入しました(500ml x 5個で100円)。
電子天秤:                             TANITAの3,000円位のクッキングスケールです。一応0.5g単位で測れます。
塩化カリウム(KCL)試薬:    天然の放射性物質であるK-40が多く含まれているため、校正に用いることができます。最近は薬局で購入できないためインターネット通信販売を利用しました。
iPhone:                               使わなくなったiPhone 3G (iPhone 4ではうまく信号を取得できませんでした)。


測定風景

単に検出器の上に置いただけです(笑)
いずれ必要になったら、鉛シールドについて考える予定です。
検出器の周りに巻いているのはアルミ箔です。BNCコネクターを付けた時に隙間が空いたための遮光処置です。
これも後でシーリングを行う予定です。

FitzPeaks NaIによる解析例
下のスペクトルは、飯館村役場付近の土壌を採取して測定したものです。
Cs-137, 134のピークを確認することができます。

厄介なのは、Cs-134と137のピークが近いため、エネルギー分解能の低いシンチレーション検出器では分離することはできません。
しかし、このソフトウェアを用いて最小二乗法による解析を行うことで、それぞれのピーク下面積を求めることができます。

次回は、測定の流れや必要な知識について書きたいと思います。

カテゴリー:放射線測定